あたし、猫かぶってます。


 「どういうことだよ。」

 意味が分からねぇ。俺は結衣に振られて、奏多達を応援することも、今まで通り仲良くすることも出来なくて、結衣を突き放したのに。


 しかも、結衣が一番俺に罪悪感を感じるような状況を作ってーーだ。最低なのは俺なのに、目の前で俺に頭を下げているのは奏多。おかしいだろ。


 「あの日、俺は結衣に無理やりキスした。」

 口を開く奏多。無理やりキスされても、別に好きな奴からなら、結衣だって構わないだろ。


 「早瀬くんに取られたくなくて、幼なじみを辞めると言って、結衣に付き合うように迫ったんだ。」

 それでも結衣は奏多を選んだんだから、別に手段なんか関係無いだろ。


 「結衣は、誰よりも独りを嫌うって知ってて。それを利用して、ある意味結衣を脅して付き合ったようなモンなんだよ。」

 そんなことを言っても、結衣と奏多は両想いだったんだから、別に、俺に言うことでもないだろ。



 「結衣は、俺があんなことを言わなきゃ「ーーーー…るせぇ。」

 こんな話も、惚気にしか聞こえないくらい、ひねくれている俺。つくづく嫌になる。


 「うるせぇよ!!結衣に好かれてんのは奏多だろ!?今更…っ、そんなこと言って何になんだよ!?」

 奏多と結衣が付き合っている。悲しいくらい残酷な現実はどう足掻いても変わらない。




 ーーーーガンッ


 「まだ気付かないのかよ!!!結衣が、俺を好きな訳無いだろ!?」


 右頬に鈍い痛みが走る。かなり痛ぇ。なんで、殴られた?



 「結衣は、早瀬くんが好きなんだよ!!!!」


 は?


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