あたし、猫かぶってます。

　「そうかそうか、分かった分かった。」

　早瀬はあたしをなだめるようにポンポンと優しく背中を叩く。今までとは別人みたいな、優しい笑顔で。


　「結衣は、みんなに好かれたいんでしょ？」

　だから、なんで結衣って呼んでんの。今まで通り早瀬でいいじゃん。なんて思いながらも、頷くあたし。


　「じゃあ、俺を好きになればいいじゃん。」


　「は？」


　「俺、大切なモノはとことん大切にしますよ？」

　あぁ、分かった。さっきから笑顔だったと思っていたけど、これ笑顔じゃなくてーーあたしをバカにしていたんだ。


　「悪いけど。」

　これで落ちる女子はたくさん居るかもしれないけど、


　「あたしが好きなのは奏多だし、あたしは早瀬が大嫌いなの。付き合うなんて絶対イヤ。」

　そう言って、早瀬を睨む。天然キャラなんて欠片も残っていない素のあたし。


　「俺だって嫌だよ。」

　は？意味わかんない。そう思いながら早瀬を見たらーーからかうように、無邪気に笑っていた。