あたし、猫かぶってます。
あたし、彼女です。
恋愛であんなに必死になるなんて、馬鹿みたい。
中学の時、あたしを無視していた女子は、男にモテるあたしが気に入らなかったから。そんなの、ただの妬みじゃん。みたいな。
あたしは、自分から行かなくても相手が勝手に好きになってくれるしーーそんなダサいこと、絶対しない。
そう、思っていたのに。
なんで、こんな気持ちになるんだろう。
早瀬にキスされたあの日から、早瀬が頭から離れなくなって、早瀬を目で追うようになって、すぐにこの感情に気付いて、泣きたくなった。
本当に、救えないくらい、自己中なあたし。早瀬を好きだなんて。今更。
頭の中から消したいのに、消えない早瀬。頭の中に浮かべたいのに、うまく浮かばない奏多。
全てが、バットタイミングなあたしの恋愛。
今のあたし、必死だ。
奏多を、早瀬を、これ以上傷付けないように、馬鹿みたいに、すごくすごく必死だ。
『俺は結衣と別れないよ。悪いと思っているなら、ずっと彼女で居て。裏切らないで。』
奏多に言われた言葉が、頭をグルグルと巡る。
早瀬を思い出して、切なくなって。そんな自分にハッとして、誤魔化すように奏多のことを考える。こんな中途半端な気持ちで、奏多と付き合うなんて。
ーーー絶対、また傷付ける。
そう思うのに、奏多を裏切る勇気なんて無くて、1人になる勇気も無くて、また泣いてしまう弱いあたし。
泣けばいいと思ってんだろ、って思われたらイヤだな。早瀬じゃないんだし、奏多がそんなこと思うわけないけど。
って、ーーーーーまた、早瀬。
もう。なんなの、本当に。つら。
早く戻れ、奏多を大好きだった自分に。つい最近までの、奏多に夢中だった自分に。ーーー戻れ。