あたし、猫かぶってます。


 「そういえば、結衣、1位だったね。」

 放課後。奏多の部屋のソファーに座っている私の頭を優しく撫でながら、奏多は思い出したかのように、そう言う。


 「インフルだけど、ずっと勉強してたもん。」


 学校の先生の教え方なんて、ぶっちゃけ頭が良いあたしには、聞いても聞かなくても同じようなものだからーー

 対策プリント、ワーク、ノート、教科書、授業プリント。たくさん勉強したもん。気持ち悪いってママに言われたしね。


 「結衣は、偉いね。」

 そう言って、あたしに優しく微笑む奏多。


 そういえば、中学の時も奏多に褒められたくて勉強していたな。奏多、頭良い子好きとか言ってたし。

 きっと、あたしのことだったんだろうな。


 「奏多は、相変わらず微妙なラインだよね。」

 中学の時は頭が良かった奏多も、高校では真ん中あたりを上がったり下がったり。


 「テスト勉強、嫌いだし。」

 苦笑いする奏多に、懐かしさを感じる。





 《奏多、打ち上げ行かないの?》

 中3の文化祭の打ち上げ。もちろんあたしを誘う女子なんか居なかったから、あたしは直帰コース。だけど、奏多まで帰ること無いのに。


 《結衣も行かないんでしょ?》


 《まあ、あたし嫌われてるし。でも、奏多は違うじゃん。》


 《察してよ、結衣以外の女子は苦手なんだよ。》

 そう言いながら、苦笑いの奏多。



 彼の苦笑いは、いつだってあたしを元気付けるためのもので、奏多はいつだって、あたしに優しかった。


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