あたし、猫かぶってます。
「結衣、ジュース飲む?」
そう言いながら、立ち上がる奏多。あたしは頷いて、ソファーにもたれかかる。
なんか、すっごくカルピス飲みたい気分。
でも、いつも奏多の家ではオレンジジュースかファンタ系が出るからなーーなんて思っていると、
「ほら、結衣。」
いつの間にか、戻って来た奏多。
「え…、」
その手にはなんとなく飲みたい気分だったカルピス。
ゴクンと一口飲むと、あたしの好きな濃い味が広がって来て、わざわざ作ってくれたんだって分かった。
「カルピス、飲みたかったでしょ?」
まるで、イタズラが成功した時の子供みたいに。嬉しそうに笑う奏多。
「あたし、言ってないのに。」
しかも、本当に気分でなんとなくカルピスが飲みたかっただけだし、普段は炭酸の方が好きなのに。
「分かるよ、結衣と何年居ると思ってんの?」
優しく笑う、奏多。
こういう奏多の優しさに付け込んであたしはずっとワガママを言ってきたんだから、今度は奏多の望みをあたしが叶えるべきだ。
奏多は、裏切っちゃだめだ。って、強く感じた。