あたし、猫かぶってます。


 きっと奏多はあたしの考えていることなんてお見通しだから、今のあたしの気持ちだって気付いているはず。あえて言わないのは、奏多の優しさ。


 だからあたしも、早瀬の話は奏多にしちゃだめだし、そもそも奏多と居るときは早瀬のこと、考えちゃダメだ。

 あたしは奏多の彼女なんだから。彼氏を、奏多を大切に、一番だいすきになるんだ。


 「奏多、ありがとう。」

 そう言って、カルピスをチビチビ飲む。あんまりゴクゴク飲んだら、なんか可愛くないし。やっぱり勝ち組女子として、最低限の猫はかぶる。


 「なーにチビチビ飲んでるの?」

 そんなあたしの心境を知ってか知らずかーーいや、多分知っているであろう奏多は、笑いながらあたしのことを見る。



 「別に、そんな喉渇いてないし。」

 あくまでも、しれっとした表情でそう答えれば、すごく優しいっていうか、愛しそうな表情になる奏多。



 「猫なんてかぶんないでよ。お見通しなんだけど?」

 あたしが言うのもアレだけどね、


 奏多ってあたしがすっごくすっごく大好きなんだなって、伝わってくるような表情だった。自意識過剰とかじゃなくて、本当に。

 奏多のあたしに対する「好き」が、一瞬で伝わってきた。


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