あたし、猫かぶってます。


 あたしが、本当のあたしで居られる人物は、家族。それと…

 「奏多!!」

 幼なじみの秋村奏多(あきむらかなた)だけ。


 「結衣、走るなよ。転ぶ。」

 ブスッとしながらあたしを撫でる。奏多は無愛想だけど、本当はすごく優しいから、あたしがどんなにワガママでも絶対に怒らない。


 だから、ついついワガママ言っていつも困らせちゃうけど、本当は奏多のことが一番好き。

 一般的に言えば、あたしは奏多に恋をしてる。


 奏多は彼女を作らない。それは、彼女が出来たとしたらあたしとこんな風に仲良くできないってわかっているから。

 あたしは、奏多が居なかったら一人になってしまうとわかっているから。


 「じゃあ、帰りにまた来るから。」

 そう言ってあたしのことを軽く抱きしめて、自分のクラスへ戻る。


 「結衣、真っ赤だよ?」

 クラスの女の子が笑いながらそう言う。


 奏多のバカ!


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