あたし、猫かぶってます。
俺、と佐伯さん。
奏多side
ーーー高1
なんてことだ。結衣とクラスが離れてしまった。しかも1組と4組じゃ体育だって一緒じゃないし。
「秋村くーん。アドレス教えてよぉ?」
なんか、モテ期なのかは知らないけど、最近クラスの女子に話しかけられて、若干戸惑ってしまうし。
「あ、んー、俺の携帯赤外線できなくて。」
女子は、恐ろしい生き物だと思う。
みんな一緒が大好きで、ちょっとでも個性を出すとイジメ始めるし。大好き大好き言っている相手を簡単に裏切ってしまうし。そんな女子に囲まれて、結衣は壊れてしまったし。
女嫌いではないけれど、どちらかと言えば苦手。なるべく関わりたくない。権力振りかざしているような、なんていうの、パワー系?…は尚更。
「えー、後で書いてあげるねっ、」
「ありがとう、」
まあ、悪い奴じゃないんだけど、正直なんで俺?って思ってしまう。結衣のクラスに居る早瀬ナントカって奴の方イケメンなんじゃないの?ってーー
結衣、友達出来たかな。
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「…図書委員会か。」
委員会決め。適当に選んだらジャンケンに負けまくって図書委員会になってしまった。まあ、別にいいけど。
図書委員会、もう1人は誰だろう、そう思って黒板に目を移す。
図書委員会
《佐伯さと美・秋村奏多》
佐伯…って誰だ。少なくとも俺が苦手な女子リストには入ってない。
「…秋村くん。」
「?…えっと、」
休み時間。俺の目の前に立っているのは2つ結びで前髪が長い、ちょっと暗めな女の子。普段、必要最低限しか女子と話さない俺は誰かサッパリ分からない。
「佐伯さと美です…。」
消えてしまいそうなくらい、小さな声。そして、涙目。
「あ、図書委員の…!?えっ、ああ、よろしく!」
なんで涙目か分からないけれど、他から見れば俺が泣かせた的な?入学早々、女の子をいじめる奴なんて思われるのが嫌で、アタフタとする俺。
「…良かった、話してくれて。」
ニコリと笑う佐伯さん。よかった、泣いてない。
「え?」
「クラスの子、大体は私と話してくれないから。」
「なにそれ。俺は、佐伯さんと話すよ。むしろ、話したいくらい。」
バカなくらい、結衣を大切にしてきたことが仇となったのだろうか。
俺は確かにその時、中学で無視されてきた結衣と、その時の佐伯を重ねてーーなにも考えずに、咄嗟に佐伯にそう言ったんだ。
そして、これが俺と佐伯が関わるきっかけになってしまったんだ。