あたし、猫かぶってます。
「秋村くん、昼休み貸し出し担当だから図書室で一緒にお昼食べよう?」
「え?あぁ、分かった。」
それから、毎日毎日俺と何かしら関わる佐伯さん。別に嫌では無いけれど、突き刺さるような女子の視線に佐伯さんは気付いてないのだろうか?
自惚れているわけではないけれど、佐伯さんを睨んでいる女子の中心で、中でも憎悪に満ちている瞳の女子はーーあのアドレスを聞いてきた女子だった。
彼女は多分、俺が好きなんだと思う。
「結衣なら、煽るようなことしないのにな。」
無意識のうちに佐伯さんと結衣を重ねるけれど、女子に嫌われるということ以外は全く正反対のような気がする。あ、でもーーー
「佐伯だから、サエ菌ね~」
「あははっ、」
悪口言われて、ヘラッと笑うところは結衣と一緒だ。
佐伯さんを放って置けなかった俺。結衣を助けられなかったから、せめて同じように悩んでいる人を助けたかった。
「こら、佐伯さんの悪口言うの、禁止。」
誰が好き?って聞かれたらもちろん結衣。
俺は、佐伯さんを助けることであの時結衣を助けられなかったことを償いたかったのかもしれない。
そして、俺の一言で優しいクラスメートは少しずつ佐伯さんにたくさん絡んだり、俺が苦手だった女子達も謝ったりしたけれど、
佐伯さんは誰とも一緒に行動せずに、気付けばいつも俺の隣を歩いていた。
「…佐伯さん、女の子の友達作らないの?」
「秋村くんと話すのが一番落ち着く。」
変なの。結衣は女の子の友達が欲しくて欲しくて、いつも女子の機嫌取っていたくらいなのに。
「ふーん、でも俺は女の子と仲良くするのも大切だと思うよ、いざとなったら俺、何もしてやれないし。」
なんて言葉にしてから、言い過ぎたかもと後悔。おそるおそる佐伯さんを見たら、やはり涙目になっていて。ーー女の子って面倒だなって、思った。
「…迷惑ですか?」
「迷惑、では無いけれど。」
結衣に仲良くしているところ見られて「頑張って!」とか言われたら、笑えないし。
「好きな人に、誤解されたくないんだよね。」
佐伯さんには悪いけど、俺が居なくても佐伯さんはもうやっていけるような気がする。無視されてないし、悪口も聞かない。俺に依存しなくても、佐伯さんは優しい人達に囲まれている。
これ以上優しくしても、勘違いさせるだけだ。