あたし、猫かぶってます。


 屋上、は早瀬が駆けつけて来そうだし。空き教室、は奏多が駆けつけて来そうだし。このまま帰ったら、2人は絶対あたしの家に向かうだろうからーー


 誰も思い付かない場所に行かなきゃ。

 そう思って、脳をフル回転させるあたし。足が速かったおかげか、早瀬や奏多や知奈はまだ追いかけて来ていない。


 まあ、放置されていたとしたら一番安心なんだけど、あの三人は多分、あたしをほっといてくれないから。


 「誰も居ない場所、誰も居ない場所、」

 早く探さなきゃ。そう思うのに、さっきの言葉が頭を埋め尽くしていて、場所なんて思い付かない。


 「もう、穴でもいいから。どこか無いの…?」

 ジワジワと涙が滲む。ほんともう、ツイてないし。


 ゴシゴシと涙を擦るように拭うあたしの目の前にあるのは、鍵付きの大荷物を入れる古いロッカー。


 ロッカーに入るなんて小学生みたいなことしたくないけど、ここなら誰にも見つからないような気がしてーー


 「うわ…っ、くっさ。」

 あたしはロッカーに身体を押し込めた。

 体育座りをしていても狭いし、なんか木のニオイやばいし、ホコリ頭につくし最悪だけど。ここならバレない、はず。




 明日から学校行きたくないな、もう学校が無くなってくれないかな、なんてバカみたいなことを考えながら、暗くて狭いロッカーの中で瞳を閉じた。


 …木のニオイ臭すぎ。




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