あたし、猫かぶってます。
「ふっ…」
熱くなってキツい言葉を投げたあたしに対して、小さく笑う女の子。なにが面白いのか理解できない。からかっているのかな。
「なに。」
強気な態度でそう聞けば、女の子は嬉しそうな声色であたしに話しかけた。
「結衣ちゃんって、偉そうだよね。」
なんでその言葉をそんなに嬉しそうに話すんだろう。あたしの本性に動揺したのだろうか。
「偉そうだし、口調キツいし、ナルシストだし、女の子に嫌われるお手本みたいだよ、結衣ちゃん。」
知ってるし。嫌われるお手本っていうか、もはや嫌われているからね。
「けど、」
嬉しそうな口調から、がらりと真剣な口調に変わる。
「それが結衣ちゃんなんだね。」
その言葉は、まるで強気になって硬い殻に閉じこもっていたあたしの心を溶かすように。奥へ、奥へ、染み込んできた。
「ずっとうちらは、理想の女の子を形成して、早瀬結衣って人格を無視して、完璧で可愛い結衣ちゃんじゃなきゃ居場所が無いような状況を作って居たんだね。」
どうせ、早瀬達に言われたくせに。そう思うのに、ポロポロと流さないと誓った涙は簡単に流れていく。
「本当は結衣ちゃんだって、うちらと同じ人間だってこと、忘れてた。」
せめて声が出ないように、必死に声を押し殺した。
分かって欲しい、理解して欲しいなんて思ったことなかった。心の中ではいつも一人だったし、信じてもいなかったのにーー
「大嫌いなんて言ってごめんね。帰って来てよ、結衣ちゃん。」
今でも一人になりたい時はあるけれどーー独りは、いやだ。
「クラスに、帰ってもいいの?」
「だって、あそこが結衣ちゃんのクラスでしょ?」
その言葉に、パリンと、私の心を包んでいた何かが弾けたような、気がしたんだ。