あたし、猫かぶってます。


 「え?」

 ケタケタと笑っていた女の子も、笑うのをやめて驚いたような声を漏らす。


 「開かない!!え、開かないんだけど!?」

 ドンドンと扉を何回も叩いてみるけれど、上からホコリがパラパラと落ちてくるだけで、びくともしない。


 「…やばくない?」


 「…かなりやばいね。」

 長時間身体を丸めているせいか背中も腰も痛いし、てか出られないし。違う意味で泣きたくなってきた。


 ジワジワと流れる涙をグッと、拭って、必死にドアを叩いたり蹴ったり。なんで開かないの、これ。


 「ーーあ、奏多くん!!」

 そんな時、クラスの女の子の泣きそうな声が聞こえた。


 「結衣、居た?」

 ハァハァと、息を切らせている奏多の声。きっと奏多は必死になってあたしを探してくれたんだ。


 「結衣ちゃんは居たんだけどーー出れないの。」

 なんて言いながらメソメソ泣き始める女の子。ちょっと待ってよ、泣きたいのはあたしだよ。てか、つられ泣きしそうだよ。なんて思いながら溢れる涙をグッと堪える。



 「結衣?」

 コンコン、と。優しく扉を叩かれれば堪えていたはずの涙がポロポロ溢れてくる。



 「…いやあああああ!!奏多、死にたくない…っ!!無理無理無理無理!」

 可愛くない泣き方、小さい子が泣くみたいな思い切り大声をあげる泣き方で泣く、あたし。


 ださい、もうプライドもなにも無いよね。


 「ほんと結衣は、バカだよ。」

 そんなあたしに、笑いながら奏多は話す。



 「絶対出してあげるから、泣かないの。」





 小さいとき、あたしが幼稚園にある高い階段から降りられなくなった時も「絶対降りられるから、泣かないで」って言われたな。


 なんて、思い出してしまった。


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