あたし、猫かぶってます。


 ーーーガンッ

 思い切り扉を叩く音と、ミシミシと軋むロッカー。パラパラと未だに落ちてくる埃。本当に、今日は厄日だ。


 「んあ…っ!!」

 踏んばっている奏多の声。奏多だってそんなに力持ちな訳じゃ無いのに、こんなに必死に頑張ってくれている。


 「かったいな、この扉!」

 ガンガンと、扉を叩く音が響く。


 「開けし、この扉ぁ…っ!!」

 なんてあたしも負けじとガンと扉を蹴ってみるけれど、微動だにしない。ムカつく、こいつ。


 「ーーあ。」

 苦しそうだった奏多の声が、ふっと緩んで。ガンガン鳴っていた音も、止まった。


 「開けられる男、居るじゃん。」

 思い出したかのように、弾んだ声でそう言う奏多。開けられる男って誰だろう?なんて思いながら奏多の次の言葉を待つ。


 「ーー俺より運動神経良くて、なんでも格好良くなる、ヒーローみたいな奴が居るじゃん。」

 なんて、自虐的なことを嬉しそうに話す。



 「早瀬くん、呼んでくる。」


 「え、ちょ…っ、奏多!?!」

 これ以上、あたし恥ずかしい思いしたくないんだけど!!よりによって早瀬とかーーー



 無理!プライド的に、無理!!!


 「奏多、奏多!?」


 「もう言っちゃったよー?」

 時すでに遅し。あたしの気持ちなんて知らない奏多は、きっと早瀬を呼びに言ったのだろう。


 やばい、恥ずか死ぬ。


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