あたし、猫かぶってます。


 ここからは、早瀬結衣の恥ずか死ぬまでのカウントダウンが始まるんだ。きっと早瀬はあたしがこんな臭くて埃だらけのロッカーから出られないなんて知ったら、爆笑するに決まってる。


 「もう、最悪…」

 今日のあたしの運勢は最下位だろう。血液型ランキングも、星座ランキングも。そして今年は確か厄年なんだ、あーあ。


 色んな意味で泣きたいし消えたいあたし。そうしているうちにも、奏多はきっと早瀬を必死になって探しているに決まってる。

 「これが開かないのが悪いんだ…ッ!!」

 そう言って叩いてみるけれど、ギチリと不気味な音を立てるだけで開く気配は無い。



 「ーーー結衣、朔くん連れてきたよ。」

 そうこうしているうちに、奏多はあっという間に帰ってきてしまって。やっぱり早瀬を連れてきたみたいだ。


 恥さらしだよ、本当。よりによって一番見られたくないライバルに助けてもらうなんて。ーー無理!!!



 これで最後、本当に最後。


 あたしは思い切り両足を曲げて、勢いよい伸ばした。


 ーーーガンッ   バキッ


 ギチギチと気持ち悪い音は鳴らなくて。何かが折れるような大きい音が、ロッカーの中に響いた。


 出られる。




 ほとんど直感だけど、そう確信したあたしは、もう一度両足でロッカーの扉を蹴った。


 ーーーーーバキリッ



 何かが外れたような音がして、急に明るくなる視界。暗闇に慣れていたせいか、頭が痛くなるような光。


 「あ、え、…え!?」

 いきなりの展開に頭はパニック状態。だって、絶対出られないと思っていたし。まさか開くとは思わなかった。


 あたし、マッチョ資質あったらやだな。本当に可愛い結衣ちゃん崩壊だよね。なんてバカみたいなことを考えながら、目の前を見ていた。


 あたしの前には誰が立っていて、ーーその誰かは、ゆっくりあたしに近付いて、優しく頭を撫でてくれた。

 …だれ?


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