あたし、猫かぶってます。


 ーーーガラッ


 扉を開ければ、昼休みでザワザワとしていた教室が一気にシーンとする。最初はなんて話せばいいのだろう、なんて考えながら、俯いた。





 「ーーーおい、早瀬結衣!」

 静まった教室の中に響くのは、大好きで大好きで仕方ない知奈ちゃんの嬉しそうな声。


 「っ…はい!」

 なんとも言えない気持ちを抑えて、大きな声で返事をすれば、優しく笑った知奈ちゃんがゆっくりと口を開いた。


 「大嫌いなんて言われたくらいで、なーにしょげちゃってるの?そんな乙女キャラじゃないでしょー?」

 なんて笑いながら言う。


 その言葉が無性に嬉しくて、心強くて、ーーさっきまでの緊張なんてぶっ飛んで、

 あたしは前を向いた。



 「嫌われたくなかった!!」

 伝われ。



 「可愛くては頭良くて、いい子になれば、嫌われないって、勝手に勘違いしてたの!!」

 喉が、震える。こわいって、震える。


 「小学校も中学校も、今までも、ずっとずっと騙して、性格悪い自分を隠してた。」

 みんな黙ってあたしの話を聞いてくれている。完璧な結衣ちゃんじゃないあたしを、見てくれている。


 「でも、あたし、気付いたわ。」

 自分を見せていないくせに、自分を受け入れて欲しいなんて、おかしな話だったんだ。



 「あたし、早瀬結衣だ!って、あたしはあたしなんだって。気付いた!!」

 伝わるか伝わらないかなんて、分かんない。


 「自分を守るのはやめる、今日でやめる。やめるから!ーーだから、文句ある人はあたしに言えばいい。可愛くない結衣ちゃんが、応えてあげるから。」

 だけど、伝えようとしなきゃ、伝わんないよ。



 「ただし、…1人ずつでお願いします。」


 俯きがちに「お願いします」と言えば、あたしを大嫌いだと言った女の子は、クスリと笑った。…気がした。


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