あたし、猫かぶってます。


 「あたしも、実は去年の春休みあたりに彼氏と別れていたんだ。内緒にしてたけど。」

 あたしの言葉に反応するように、ぶっちゃけ出した知奈ちゃん。「ま、最近彼氏出来たんだけど」と付け足して笑った。



 「ーーあたしもコレ、アイプチなんだよね。」

 苦笑いを浮かべながら自分のマブタを指差してそう言うのは、あたしを大嫌いだと言った女の子。



 「俺は、早瀬ちゃんラブとか言っといて、彼女居るんだよね。」

 女子に無視されていた時に優しく話しかけてくれた男の子も、「ごめん早瀬ちゃん!」なんて言いながら暴露し出す。


 「あたしはーーー」


 「俺もーー!!」

 あれこれと、少しずつ少しずつみんなが自分の隠していたことを暴露し出す。やっぱりかと思うことや、驚きの事実まで、たくさん知った。



 「なーんだ、みんな結衣と変わんないじゃん。」

 ケタケタと高らかに笑いながら知奈ちゃんは話す。その言葉の意味が分からないあたしは首を傾げてみるけど、クラスの中の意味を理解した子は、一緒になってケタケタ笑っていた。


 「確かに変わんないかもー!」


 「むしろ沢田が風呂入ってないのは早瀬ちゃんよりヤバい。」

 なんでこんなに、みんながニコニコしているんだろう、なんて思いながら知奈ちゃんを見れば、知奈ちゃんはあたしの頭をガシガシと撫でて口を開いた。


 「結衣が猫かぶっていたことと、沢田が二週間お風呂入ってないこと。共通点は嫌われたくないから。ーーほら、みんなの秘密だって、結衣の秘密だって、大して変わらなくない?」

 なんて笑いながら頭を強くガシガシするから、痛くて涙が出そうだ。



 「…変わんない、かなぁ?」


 涙が、出そうだ。


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