あたし、猫かぶってます。


 喧嘩して、自分の悪かったところを反省して、謝って、それから仲直りをする。

 小学生でもできるくらい簡単なことなのに、あたしは何をこだわってきたんだろう。


 悪いことをしたら謝る、相手が反省しているから許す。理由なんてそんなことで充分だったじゃん。それ以上考えることなんて、ないじゃん。


 「…ごめんね、みんな。」

 そう言って、みんなの顔を見れば、ニコニコと笑っているみんなの顔が瞳に広がっていて、泣かないようにと引き締めていた気持ちが、グラグラ揺れる。


 「あたし、性格悪いし、こんな感じだけど、それでもいいならーー」

 一番言いたかった言葉。ギュッと拳を握って、スッと息を吸ってーーー 


 「コレカラモ、ナカヨクシテネ。」

 口から出たのは小さい声で、呆れるくらいにカタコトで、気合なんて感じられない言葉。


 いや、もっと上手く言うつもりだったんだけど、普段こんな風に友達に言う事なんて無かったし、完璧な結衣ちゃん以外の演技なんて、できない。


 「仲良く、しよう!!」


 あたしの言葉なんかより、何倍も大きな声で仲良くしようと言ったのは、大嫌いだと告げたあの女の子。


 大嫌いとか言いつつ、あたしのこと好きじゃん。

 なんて思いながら、笑って頷いた。


 「結衣、ちゃん…」

 笑うあたしの前に、ゆっくり歩み寄る女の子。


 「佐伯、さと美、」

 あたし、今なら佐伯さと美の気持ち、ちょっと分かるかも。和解とか仲直りーって青春ドラマみたいな展開にはならないけど。


 まあ、だってあたし、性格悪いし。


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