あたし、猫かぶってます。
「結衣ちゃん、ムカつくよ。」
ギロッと睨みながらあたしを見る佐伯さと美。きっともう、大人しい佐伯さと美を演じる必要が無いのだろう。
「佐伯さと美とあたしってさ、似てるよね。」
フッと笑いながらそう言えばあからさまに嫌そうな顔をする佐伯さと美。あたしと一緒で怪訝な顔するとか、なにこの地味女。
「一緒にしないで。」
佐伯さと美の言葉に、さらにピキリと来たあたし。多分自分と似ているせいもあるんだろう。ーー合わない。
「あたしってさ、佐伯さと美が欲しいもの全部持ってるもんね。羨ましいよね、憎いよね。」
「うっさい!!」
バッと再びあたしに手を上げてーーーそのまま振り上げる。
ーーパンッ
乾いた音と、鈍い痛み。こいつ口より手を先に出すよな、なんて考えながらあたしも負けじと
ーーーパンッ
反撃、した。
「いった…!?」
驚いたようにあたしを見る佐伯さと美。いや、あたしだって痛かったですよ。
「あのさ、佐伯さと美さぁ、謝ってよ、あたしに!!」
「は!?」
「佐伯さと美のせいでめちゃくちゃイライラしたし、泣いたし、ロッカーに閉じこめられたり、散々だったし!」
「は、嫌!結衣ちゃんが謝ってよ!!叩かれて痛かったし、結衣ちゃんのせいで私みんなから今まで以上に嫌われた!!」
「…叩いたのはごめん。でも、嫌われたのは知らない。佐伯さと美が悪いよ。ーーまあ、謝るなら、あたし友達になってあげてもいいけど、どうする?」
そう言えば佐伯さと美はびっくりしたような表情であたしを見て。ボロボロと涙を零して、
「ご、ごめんなさぁああああい!!!!」
いつかのあたしみたいに、情けなく泣くもんだから、焦った。まさか泣くとは思わなかった。
ほんと、意地悪な小学生みたいだ。