あたし、猫かぶってます。


 当たり前のことだと思っていたけれど、全然当たり前なんかじゃなくて。周りに大好きな人が居るってことは、すごくすごく幸せなことだったんだ。


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 「お疲れ様。」

 放課後。自分のクラスから真っ直ぐあたしのクラスへ来てくれた奏多が、ポンポンとあたしの頭を叩きながら、お疲れ様と笑ってくれた。


 「結衣は変われた。ちゃんと変われたよ。」

 なんて言いながら「もう大丈夫」と小さく呟く。


 確かに、あたしはもう、前のあたしじゃない。友達の大切さとか、なんていうか、強くならなきゃ、みたいな気持ちとか。

 奏多と2人で居たときには考えてもみなかった。


 知奈、早瀬、さとみん、麻紘、棗ちゃん、マッキーさん。たくさんの人に出会って、たくさんのことを知れた。

 絶望ばっかりの世界じゃないって、知った。



 「朔くんに感謝しなきゃな。」

 なんて笑う奏多。あたしも自然と笑顔になってしまう。



 「早瀬だけじゃないよ、ピンチの時は昔から奏多が居たから、頑張れたもん。」

 早瀬だけが、奏多だけが、あたしのことを支えたんじゃない。みんなに支えられてきたんだ。





 「ーーてか、話って?」


 「ああ、朔くんの告白聞いてからでいいよ。」

 なんて意地悪に笑う奏多。奏多も早瀬があたしに告白するだろうって思っていたんだ。


 ーートンッ

 優しく背中を押されて、


 「いってらっしゃい。」

 優しい声で呟いた、奏多。


 「すぐ戻るから!!」


 早瀬を探しに教室を出たあたしは、奏多がどんな気持ちで背中を押したのかーー知る由も無かった。



 「結衣の気持ち、バレバレだっつうの。」

 奏多の、呟きも。


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