あたし、猫かぶってます。


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 「早瀬っ!!」

 屋上は、今日も開いていない。屋上前の階段で、携帯をいじる早瀬を見つけて、名前を呼ぶ。


 早瀬はあたしに気付いて顔を上げてーー嬉しそうに笑う。



 「待ってた。」

 そう言って、あたしに近付いてくる早瀬。


 「話って、なに?」

 ドキドキした気持ちを隠してそう言えば、早瀬は「知ってるくせに」と呟いて、ガシガシと頭を掻いた。



 「棗と、別れた。完全に、別れた。」

 どんな顔すればいいのか分からなくて俯いてみれば、ドキドキと鳴る自分の心臓の音をやけにリアルに感じ取れた。


 「結衣が、好きだって粘ったよ。」

 なんて笑いながら話す早瀬。


 「そっか、」

 それ以上なにも言えなくて、俯いたままギュッと瞳を閉じてみる。ああ、めちゃくちゃ緊張するんだけど、どうしよう。


 「ーーあれから色々考えたけど、俺やっぱ結衣が好きだわ。結衣が居ない世界なんて、無理だ。」


 急に手を握られて、ビクリと反応してしまう。



 なんて言えば良いのだろう。言葉が浮かんでこない。

 そんなあたしをよそに、優しくあたしの手を触りながら、再び口を開く早瀬。もう、曖昧には出来ない。はっきりさせなければいけない。



 「たくさん泣かせるかもしれないけど、その分幸せにしてやる。幸せ過ぎて怖いって思わせてやる。ーーだから、」

 「奏多じゃなくて、俺の彼女になれよ。」


 予想していたはずなのに、何度も聞き慣れている告白なはずなのに、シミュレーションを何度も何度もイメージしていたはずなのに、


 ーー胸がキュウキュウして、言葉が出なかった。



 「っ、」

 痛くはない。苦しくもない。キュウキュウするの。



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