あたし、猫かぶってます。
「好きだ、結衣。」
「うん。」
「ちょー好き。あり得ないくらい、好き。」
「うん。」
「キスしていい?」
「うん。………ん?うんじゃない、間違えた!」
そう言えば、早瀬は笑いながら「テンパりすぎ」なんてあたしをからかった。真っ赤なあたしの顔、恥ずかしい。
「結衣ほんと、分かりやすい。」
「…自分でも、そう思う。」
「答え、もうずっと前から決まっていたんだろ?」
「うん。」
「…俺を選んでくれんのか、奏多を選ぶのか。どちらにしても片方は傷付くから、言えなかったんだろ?」
「うん。」
そう返事をすれば、「ばか」と怒られてベシリと頭を叩かれた。地味に痛かったりする。
「俺も奏多も傷付くことを覚悟したうえで告白してんの、分かんねえの?むしろお前がハッキリしなきゃ、意味ない。」
「…うん。」
早瀬のこういうところ、大好きだ。こういう早瀬に何度も何度も助けられてきたんだもん。
「返事は今じゃなくていい。けど、ちゃんと幸せになる決断しろよ。例えば俺と付き合うとか?」
なんて冗談まじりに笑う早瀬。見慣れた笑顔も優しくて力強い言葉も、好きで好きで仕方ない。
「とりあえず今日は奏多と帰れ。俺はアイスクリーム・ラブの最終巻見てから帰るから。」
なんて。少女漫画を読みながら笑う早瀬にバイバイと手を振って、階段を降りた。