あたし、猫かぶってます。


 「おっそ。」


 「…ごめんなさい。」



 早瀬へのドキドキも、胸を締め付けられるような気持ちも、全部全部、早瀬が好きだからなのだと思っていた。

 初めて一位を取ったとき、悲しくて悲しくて仕方なかったのは側に早瀬が居なかったからなのだと思っていた。


 だけど、違う。早瀬と話すようになって、気付いた。

 「早瀬はあたしの憧れだよ…っ、」

 なんでも出来て完璧だけど、あたしとは違う、あたしがしたくて仕方なかったことを軽々とやってみせる早瀬がーーー眩しかったんだ。


 「ずっと早瀬になりたくて、早瀬への憧れが恋なのか分かんなくなって、勝手に決めつけてた。」


 憧れと恋心は、あまりに似すぎていて。居心地の良いこの関係に寄りかかりすぎていたんだ。


 「で、つまり。俺になんて言いたいの?」


 「…っ、早瀬とは、」

 言え、あたし。



 「早瀬とは、付き合えない…っ。」


 いつかと同じ、涙で滲んだ視界の中で。早瀬がフッと笑ったような気がした。



 「     」


 「…っ、」

 耳元で囁かれた言葉。


 ジワリと、また涙が溢れてきた。


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