あたし、猫かぶってます。

　「朔くんを振ったの？」


　「…うん。」


　「あんなイケメンで頭よくて、何でも出来るのに？」


　「…うん。」

　素直に言えば、再び「ばか」と言われた。だけれど、あたしをギュッと抱き締める力を緩めてくれないという事は、やっぱりそういうことなんだと思う。



　「奏多、好き。ごめんね、ずっと好きだった。」

　なんて言えば、「もういいから」と言われ再び抱き締められる。なにそれ、全然良くないよ、奏多。


　「ーーー良くないよ。ちゃんと聞いて、奏多が好き。」

　しつこいくらい、ウザったいくらいに何度も何度も告白をするあたし。恥ずかしさは無くて、ただただ奏多のぬくもりに触れていた。



　「～～～～～～～～っ、ああ、もう！」

　そんなあたしに、余裕の無くなった奏多の、なんとも情けない声が聞こえる。


　涙が止まり、クリアになった視界の中には耳まで真っ赤になっている奏多が映った。


　「カッコいい台詞、思い付かない。恥ずかしい、マジ、俺、ぶっちゃけ把握出来てない。」

　最近見なくなったヘタレ奏多が、最後にどうやら来てしまったようだ。



　「何度も何度も好き好き言わないでよ。ーーー俺だって、好きなんだから。」

　涙目でそう言われれば、涙腺が弱いあたしまでつられ泣きしてしまった。



　ヘタレ奏多、恐るべし。