あたし、猫かぶってます。
「てか、俺、ずっと好きだったんだよ。」
なんて、困ったような顔をして、どこか拗ねたように言う奏多は、全然格好良くなんかない。
それなのに、こんな気持ちになるのはーー奏多だからなのだろう。
「結衣を朔くんから引き離したり、俺から離れられないようにしたり、卑怯なこと、たくさんした。」
…知ってたよ、ばか。
優しい奏多にあんなことをさせたのは、あたしなのに。奏多はあたしを責めずに、自分を責めたんだ。
それも全部、知っていた。見ない振りして、知らない振りして、騙されている振りした。
「今日だって、笑顔で別れるつもりだったんだけどーーー無理だった。」
なーんにも知らない奏多は、ペラペラと話す。
「やっぱ、好き。不純な俺をーー許して?」
まるで浮気をした時のセリフのように、眉毛を下げて困った顔で許してと言い出す奏多。…可愛い。
「ーーー許すよ。」
こんな可愛い顔されて許さない、なんて言えるわけが無いじゃないか。だって、
「だって、知ってて付き合ってたんだもん。」
そう言えば、抱き締める力がフッと緩んで。ガッと肩を思い切り掴まれた。
「え!?」
カッと目を見開いて、驚きを隠せない表情の奏多が、再び真っ赤になるまで、そう時間はかからなかった。