あたし、猫かぶってます。


 「奏多が、いつも切なそうにあたしを見ていたのも知ってたし、多分全部分かってた。」

 早瀬への気持ちが憧れだってことは、普通に話してくれるようになってから気付いたことだけど、多分あたしはずっと分かってた。


 「早瀬と棗ちゃんが付き合ってるって奏多が意地悪な顔して言った時、泣いたじゃん?ーーー元カノとは話すくせにあたしとは話さない早瀬に、仲間外れにされたような気がしたんだよね。」

 胸が痛かったのに、よくよく考えてみれば早瀬に嫉妬したことなんて一度も無かった。


 奏多がさとみんとキスしていたって聞いた時は学校休んだのに、早瀬が棗ちゃんと付き合ったって聞いた次の日も普通に学校行ったし。


 「ーーーなんだよ、それ。」

 へなへなと、力が抜けたようにしゃがむ奏多。両手を広げていて顔を隠しているので表情までは分かんないけどーー


 「ああ、もう。つらい。」

 情けない奏多を見るのは、嫌じゃない。



 「結衣が好きすぎてつらい。まじ、俺、こんな幸せでいいのかな。まじ。」

 なんで奏多って、こんなに可愛いんだろう。




 「奏多、好き。」

 あたしもしゃがんでそう言えば、奏多は小さくピクリと動いた。顔見えなくても、奏多が考えていること、分かるよ。



 「…勘弁してよ、結衣。」

 だって奏多の一番近くに居たんだもん。


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