あたし、猫かぶってます。


 上を見上げればーーー


 「うわ、朔くん!?」

 呆れた顔であたし達を見下ろす早瀬が居て。意外と、普通に、いやかなりビックリした。


 「あ、早瀬…」

 名前を呼んだものの、なんて声をかけたらいいのか分からなくて、戸惑っていると。そんなあたしを見てクスリと笑った早瀬が、あたしの頭を撫でた。


 「結衣ちゃん、ギューしてやろうか?」

 なんとも爽やかな笑顔で両手を広げるものだから、戸惑った。早瀬は一体どうしたのだろう。


 「な…っ!?」

 早瀬の言葉にいち早く反応したのは奏多で、あたしに「行くな」と目線で訴えかける。


 「俺と結衣は親友同士なんだよ。熱い友情を込めた抱擁を邪魔すんのか?ーー奏多。」

 意地悪な顔で奏多をいじめるようにそう言えば、ブスッとした表情の奏多が早瀬を睨んだ。



 「…結衣は、あげないよ。」


 「奏多って意外に嫉妬深いんだな。」

 ケタケタと笑う早瀬。気付けば気まずさなんてものは無くなっていてーーいつもの三人に、戻っていた。



 「こんな所でキスなんかしちゃって、本当奏多って、バカだよね。」

 あたしも早瀬に便乗してからかえば、困ったように顔を赤らめる奏多。ーーサドじゃないけど、この顔好きかも。



 「結衣~…」

 なんて弱々しく言う奏多を見て、早瀬と2人で笑った。





 「ま、俺帰るわ。」

 散々奏多をいじって気が済んだのか、早瀬は立ち上がりスタスタと歩いていった。



 「ばいばーい!また、明日!!」

 あたしがそう言えば、後ろを向いたまま手を振る早瀬。



 「あ。」

 数歩歩いて、なにかを思い出したかのように振り返って。


 「奏多。結衣泣かせたら、許さねーからな。」

 奏多にそう言って、再び歩き出した。



 早瀬って、どこまでもイケメンだよ。ほんとに。


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