あたし、猫かぶってます。


 「早瀬って、どこまでもイケメンだよね。」


 「…うん。」

 2人でしみじみと早瀬がイケメンだと共感し合った。あたしも早瀬みたいな人になりたいな。


 「結衣がもし、朔くんを好きになっても納得いくよ。」

 なんて縁起でもないことをペラペラと話す奏多。あたしが早瀬を好きになってもいいのか、ばーか。


 「ふーん。」

 いや別に、早瀬を好きになったりとかはしないけど。あまりに奏多が早瀬を尊敬し過ぎて、なんか嫌だった。

 束縛して欲しい訳じゃないけど、付き合ったばかりなのにそんなこと言わないでよ、ばか。



 「ーーーま、最後は俺を好きになるって、確信してるからね。」

 拗ねてるあたしの頬をツンツンとつつきながら、得意気に笑うーー奏多。



 「ナルシスト。」

 なんて可愛くないこと言って、先を歩いた。


 真っ赤な顔をしている自分を見られたくなくて、早歩きをすれば。後ろからグイッと腕を引っ張られた。



 「朔くんを見習って、肉食系なるから。」

 その言葉に、また心臓が跳ねた。



 カッコいいとか、むかつくとか、生意気とか。あれこれ思ったけどーー好きだ、ばか。

 奏多じゃなきゃ、無理。


 「…早く帰るよっ、」

 あたしがそう言えば、フッと笑った奏多が優しく手を握ってくれて。ニヤケてしまった。


 さりげない、恋人繋ぎ。


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