あたし、猫かぶってます。
「ごめん、結衣借りる。」
後ろから、そう聞こえたかと思うと、突然身体を持ち上げられるーー
「え、ちょっ!?」
あたしを担いでズンズンと歩くのは、クラスの絶対的存在の早瀬朔。
「今は早瀬くんに構ってるヒマ無いの!!」
そう言いながら暴れるけど。手足を押さえられてなにもできなくなる。悔しい。
屋上の階段まで来ると、早瀬くんはあたしを降ろしてまっすぐな瞳で問いかけてきた。
「斎藤を助けたいんだろ?」
ちぃちゃん…
「俺なら、安達を止められる。結衣が頼むなら、俺は安達を止めるよ。」
一見、上から目線だけど、その表情は真剣で。頼ってしまいそうになるのを、グッと抑えた。
「あたしは、早瀬くん嫌いだから絶対頼りたくない!!ーーそれに、ちぃちゃんは、あたしに相談したくなかったみたいだし…」
「結衣って、案外バカだよな。」
あたしが本気で悩んでるのに!!
「大好きな友達だったら、巻き込みたくないだろ。嘘ついてまで斎藤は結衣を守ったんじゃん。」
それだけ言うと、早瀬は教室の方へ戻っていった。
ーーちぃちゃんが、あたしを守った?