あたし、猫かぶってます。


 「俺さぁ。」

 早瀬はいつの間にか安達の前に立っていて、安達を見下ろしながら口を開く。


 「イジメとか、嫌いなんだけど。」

 不機嫌な表情で安達にそう言うと、みるみる真っ青な表情に変わっていく安達とその仲間たち。


 このクラスでは、早瀬は絶対的存在。早瀬は基本的誰かと親しくしないけど、誰かを嫌ったりもしない。あたしは例外だったけど。

 早瀬に嫌われたら、楯突いたら、きっと周りは誰も助けてくれない。“人気者”のあたしは例外だったけど。


 「結衣には止められてたけど、やっぱ無理。」

 そう言いながらため息を吐く。

 あたし、止めてなんかいないのに。なんで早瀬は嘘つくの。あたしは、早瀬を頼ったズルい人間なのに。


 「そんなイジメたければ、俺の教科書に書けよ。」

 あたしの気持ちなんて知らない早瀬は、そう言って自分の教科書を安達に渡す。


 「好きなだけ、書けば?」

 真っ青な安達と怪しく笑う早瀬。どうやら早瀬は女子にも容赦ないらしい。



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