あたし、猫かぶってます。


 「だって朔くんと仲良しだし…」


 「あたしは、早瀬じゃなくて奏多が好きなの!」

 思わず大きくなる声。早瀬が好きとか、気持ち悪すぎる。早瀬とキスとか絶対無理だし。


 「え?」

 あたしの叫びに、キョトンとした顔のちぃちゃん。


 「よかったぁあああ!!」

 ちぃちゃんもあたしと同じくらい大きな声でそう言って、ヘタリと階段に座り込む。


 「結衣に、嫌われたくなくてずっと言えなかった。」

 ちぃちゃんの声は震えていて、なんていうか無性にギュッとしたくなった。レズじゃないけど。


 「なんで、嫌われたくなかったの?」

 あたし、ウザ。自分でも思ったけど、ちぃちゃんの気持ちがハッキリ知りたい。…って、なにあたし、キャラ違うね。



 「だって、大切な友達には嫌われたくないじゃん。」


 「っ!」


 「てか、知奈って呼んでよ。」

 なにこれ、なにこれ、なにこれ。

 今まで友達なんか居なかったあたしが、ちぃちゃんの大切な友達とか、やばい、涙出そう。


 「知奈ちゃんって、呼びたい。」

 いつか呼び捨てで呼んでみたいな。


 「いつか知奈って呼んでよね。」

 そう言って知奈ちゃんはあたしに抱きつく。初めてのことに戸惑いながらも嬉しさを隠せないあたし。


 「知奈ちゃん、仲良くしようね。 」

 早瀬結衣、17歳。今日、知奈ちゃんと本当の友達になりました。


< 36 / 282 >

この作品をシェア

pagetop