あたし、猫かぶってます。


 みんなに好かれている完璧なあたし。そんないあたしでも唯一嫌われている相手が居る。

 「どいて。」

 そう言って、あたしの席に群がる女子をチラリと見て、あたしを睨みつける男。早瀬朔(はやせさく)。同じ苗字で、しかも隣。最悪。


 顔がいいからか、多少自己中でもいつもクラスの中心に居る。だけど、あたしは大嫌い。

 我慢を知らない傲慢さは、まるで王様気取り。


 「朔くん、オハヨー!」

 ちぃちゃんが早瀬朔に挨拶する。元々男女仲良しなクラスだから、こうやって挨拶したって簡単にはタラシとか言われない。ちぃちゃんだからかもしれないけど。


 「はよ。」

 早瀬朔も、下心が無い女子には割と普通に挨拶を返してくれる。


 「早瀬くん、おはよー」

 「……」

 ただし、あたし以外に、だけど。


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