あたし、猫かぶってます。
「早瀬くん、結衣のこと嫌っているらしいじゃん。いくら嫌いだからって無理やり抱き締めてーー好き勝手やり過ぎじゃない?」
奏多はいつも、あたしのために暴走する。みんながヘラヘラ媚びを売る王様みたいな早瀬にさえも、全く怖がる様子無く怒りを露わにする。
「違う。結衣が泣いていて抱き締めたかったから抱き締めた。抱き締めたから泣いていたんじゃなくて、泣いていたから抱き締めた。」
しれっと答える早瀬に、眉間にシワを寄せる奏多。
「つーか幼なじみのクセに知らねぇの?結衣って強がりに見えてすげー泣き虫なんだよ。」
「は?」
いやいやいやちょっと待って。なんで奏多のこと挑発してんの?!
「案外俺の方が結衣のこと分かってんじゃん。」
いくら親友だからって奏多にまで仲良しアピールしなくていいってば!
「早瀬くんが結衣を分かっているとか知らないし、知りたくもないけどさぁ、」
奏多がハァと、ため息を吐く。
「俺ら、そこら辺に居るカップルより仲良しだし、早瀬くんより俺の方が、絶対結衣を大切にしてる。」
…ちょっと、ごめん。にやけそう。