あたし、猫かぶってます。
「ま、俺は関係無いけど。気分悪いし帰ろ。」
そう言って早瀬はスタスタと帰っていった。
いや、ちょっと待ってよ早瀬!空気悪くしといて自分だけ帰らないでよ!ねぇ。
「ちょ、はやーー」
早瀬、と言おうとしたんだけど、奏多があたしの手首をがっちり掴んで首を横に振る。
行かないでって言われてるような気がして、あたしの動きはピタリと止まってしまった。
「早瀬くんと仲良いの?」
「うん、相談とかに乗ってもらって…」
嘘をついてもバレるんだから、もう本当のことを言えばいいんだ。
「相談?俺、聞いてないよ。」
だって、中学の時みたいに奏多に心配かけたくなかったんだもん。
「でも、もう解決したし!」
「早瀬くんには言って、俺には言えないこと?」
なんか、今日の奏多はーーいつもと違う気がする。
「奏多、落ち着いて?」
「落ち着けるわけない、結衣泣いてるし抱きしめられてるし、俺だってさすがに妬くよ。」
眉間にシワを寄せて、口をギュッと締めて、あたしに顔を近付けながら奏多はそう言った。
え、焼?…妬く?