あたし、猫かぶってます。
これって喜んでいいんだよね?奏多が、早瀬にヤキモチ妬いてるってことだよね?
「早瀬くんには、泣いてるみたいだし。」
ムスッとしている奏多が、なぜかすごく可愛く見える。
「あたしが一番好きなのはーー奏多だもん。」
普段はこんな恥ずかしいこと言わないけど、たまには悪くないかなーなんてね。
「知ってる。俺も結衣が一番だよ。」
切なげに笑ってそう言う奏多。
それは“幼なじみ”として?ーーあたしはそういう意味じゃないんだよ、奏多。
「奏多!!」
奏多は、あたしを大切にしてくれている。優しいし、あたしのこと泣かせないし。でも、あたしは奏多に優しく出来てる?こんな切ない顔、いつもさせてた?
ワガママばっかで、困らせてる?あきれられてる?
「あたしは奏多の負担になってないかなぁ?」
「結衣?」
「邪魔じゃないかなぁ?呆れられてないかーー」
ーーーギュッ
ゼロ距離。あたし、奏多に抱きしめられてる。
「バカ結衣。」
そう言った奏多の声は、ちょっとだけ震えていたような気がした。