あたし、猫かぶってます。


 「邪魔じゃないし、呆れてもいない。」

 ギュッと抱き締めながらあたしに言い聞かせるようにあたしにそう言う奏多。奏多に抱き締められるのは初めてじゃないけど、こんなドキドキするのは初めてだと思う。


 「奏ーー」

 「嫌いじゃないし、困ってないし、むしろ全部逆。」

 幼なじみなんて、長い時間を一緒に居るだけで大切なことは何も分かっていなかった気がする。 

 奏多が何を考えているか、とか。奏多に呆れられていないか、とか。


 「俺さぁ、早瀬くんより優しくなるし、早瀬くんより絶対結衣のこと笑顔にするからーー」

 なんで早瀬にこだわるの?あたしが好きなのは奏多なのに。本当奏多は鈍感だよ。


 「早瀬くんじゃなくて、俺を頼ってよ。」

 あとちょっとなのに。うまく伝わんない。


 「もっと困らせて良いから。大体、結衣のワガママ聞くのは俺の仕事じゃないの?」

 なんで奏多は、切なそうに笑うの?


 「早瀬くんのとこに行くなよーーバカ結衣。」

 行かないよ、バ奏多。本当バカ。


 早瀬は彼女、居るんだよ?


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