あたし、猫かぶってます。
「ねぇ、奏多。」
もしかしたら、これがチャンスなのかもしれない。
もっと可愛くなってから、もっと女子力上げてから、もっと奏多に似合う女の子になってから、そう思っていた。
でも、自分で言うとナルシストみたいかもしれないけど、元々顔は整っている。女子力だって高いと思う。
お似合いかは分からないけど、あたしだってブサイクなわけじゃないし、もしかしたらあたしが告白すれば奏多と付き合えるのかもしれない。
「奏多は、恋愛的に好きな女の子…居る?」
だけど、あたしだって女の子だから。奏多も同じ気持ちだったとしたら、奏多から「好きだよ」って言われたい。
だからーー奏多、あたしを好きになって。
もっと奏多に近付きたい。課題手伝ってとか、ホラービデオ一緒に見てとか、いちいち命令的に理由を作るのは、もうやだ。
「会いたいから」って理由だけで会えるような距離になりたい。奏多の特別になりたい。
「居るの?」
そう問いかけてみると、柔らかく塞がれる唇。
「気付いているかもしれないけどーーまだ、秘密。」
あたしの唇に人差し指を軽く触れさせてニヤリと意地悪に笑う奏多。
…ずるいよ。