あたし、猫かぶってます。


 「ただいまー、」

 そんな感じで知奈ちゃんの話や、奏多の話をしているうちに、あっという間に麻紘くんの家に着いた。


 「遅かったじゃん。」

 早瀬は知奈ちゃんとゴロゴロしながら卒業文集やら、アルバムやらを見ていた。


 「途中、結衣ちゃんがコンビ二でアイス買うからさ~」


 「麻紘だって、散歩してる犬にいちいち構ってたじゃん!」


 「え、麻紘って…」

 早瀬に言われて、ハッとする。今まで徹底的に麻紘くんって呼んでいたのに、中学の時みたいな会話をしていたせいか、麻紘って呼んでしまった。


 「あー、麻紘くん!」

 間違えた、と笑いながら誤魔化す。

 前みたいな会話をしたって、笑ったって、関係が戻ったわけじゃないし。


 「てかさぁ、思ったんだけど、よそよそしい呼び方辞めない?ーー結衣。」

 麻紘くんは、麻紘は、そう言ってあたしを見る。中学の時と変わらない、ゆるい笑顔。

 2年ぶりに呼ばれた名前。自然と、嬉しくなる。


 「仕方ないから、麻紘って呼んで仲良くしてあげるよ。」

 照れ臭くて、そう言いながら麻紘から視線を外す。麻紘と、仲直りできた。そのことが嬉しくて、口元が緩む。


 「何あったんだよ、お前ら。」

 なにも分からない早瀬は、首を傾げながら麻紘を見た。


 ーー早く奏多に報告したい。よかったねって一緒に喜んでもらいたい。奏多に、会いたいな…


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