あたし、猫かぶってます。
「今日は楽しかったなぁー、」
知奈ちゃんが笑いながらそう言う。なにこの笑顔。めっちゃ可愛いんだけど。ニヤニヤしながらお互い目を合わせる麻紘とあたし。考えていることは、多分一緒。
あたしは、顔が整ってるって意味で可愛い。知奈ちゃんは、なんていうか存在が可愛い。天使みたいな?
「結衣って意外にアホだよな。」
早瀬はバカにするような表情で、鼻で笑いながらあたしの悪口を堂々と発言。潔いことは認めるけど、むかつく。
「中学ん時の国語のテストでア~ウの選択肢でエって書いてたしな。」
そんな中、さらにあたしの醜態を晒そうとする麻紘。
なんだかんだ、楽しかったな。なんて考えていたら、駅に着く。
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「麻紘ー?」
時刻表を見ているときに背後から、聞き慣れた声が聞こえて心臓がドクンと跳ねる。
「…由真。」
麻紘の視線の先を見て、思わず俯いてしまう。そこに居たのは、あたしの親友だった人で、麻紘の元カノ。そしてあたしを無視し始めた首謀者。
お願い、気付かないで。気付かないで、気付かないで!!!動揺しながら、ひたすら祈る。
「麻紘、彼女居たの?ウケるーー」
知奈ちゃんを見て、笑い出す由真。あたしの方には気付いていないみたいで、ほっとしたのも束の間。
「あれぇー?イケメンくんの隣に誰か居るんだけど。」
気付けば、あたしの前に立っている由真。
「久しぶりだね、結衣。」
「…由真。」
愛想笑い、愛想笑い、愛想笑い。それだけしてれば、きっと大丈夫。だよね?
ねぇ、奏多ーーー。