あたし、猫かぶってます。

　「主導権握られっぱなしは好きじゃないんだよね。」

　ニヤリと笑う奏多が、なんか変に色気があって。あたしは反抗出来ずに俯くだけ。


　「奏多、あたしに逆らったりしなかったじゃん！」

　今までの奏多はあたしが何をいっても、対抗することなんてしなかった。ただ笑顔で頷くだけだったのにーー


　「そりゃあ、結衣に好かれたかったし。ほんとは俺、結構意地悪だよ？」

　実際優しさ100パーセントなのは、あたしの前だけで、他の女子には頼み事をされても断ったりしていたらしい。


　「意地悪でも、好きだもん。」

　たとえ意地悪でも、あたしのことを誰よりも考えてくれる。あれは、作られた優しさじゃないもん。


　「あー、よかった。」

　あたしから顔を離してうなだれる奏多。


　「嫌われたら、笑えないし。」

　嫌いになんかなるわけないじゃん、ばか！


　「奏多、こっち向いてよ。」

　そう言うと、そっと顔を上げる奏多。かわいい。


　「あんまり見ないでよ、照れる。」


　奏多の言葉にいちいちドキドキする。奏多のことしか考えられない。これからもずっと、奏多だけだよねーー？