あたし、猫かぶってます。
あたし、分かんないです。


 「結衣の好きなタイプの男ってどんな奴?」

 目の前で腕を組みながらあたしに問いかけているのは早瀬。隣でVORGを読んでいるのは知奈ちゃん。知奈ちゃんをチラチラ気にしているのは麻紘。


 由真事件も落ち着いて、1ヶ月ちょっと。あれから、気付けばいつも4人で居る。まぁ、気を遣わなくていいから楽なんだけど。

 「あたしの好きなタイプ?ーーー奏多。」


 この3人にはバレてるし、別にいいかなーって思って大好きな人の名前を出す。

 あの日以来、特に進展はしていないけど、相変わらず奏多とは仲良しだし大好き。


 「お前バカ?タイプ聞いてんだけど。」

 早瀬は顔をしかめながらあたしを見る。何様だコラ。


 相変わらず早瀬も王様キャラ全開だけど、最近はこれでも優しくなった気がする。これでも。


 「タイプ、かぁ…」

 改めて考えるけど、あたしは理想が高いと思う。


 「王子様とか、ヤバいよね。」


 「は?」

 早瀬はバカにしたようにあたしを見るけど、気にせず話を続ける。


 「白馬が似合って、優しくて、ピンクの薔薇の花束抱えながら、僕のためにお味噌汁作って下さい!って言ってくれてーー」


 「わかった。もういい。」

 早瀬は呆れた顔であたしを止める。


 「結衣って確かにモテるけど、恋愛経験無いだろ。」

 ビシッとあたしに告げる。ーーーいや、あるし!


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