あたし、猫かぶってます。


 「意味分かんない!!」

 親友って思っていたのはあたしだけだったってこと?めちゃくちゃバカみたいじゃん。


 「麻紘や、知奈ちゃんは早瀬にとって親友だけど、あたしは違うの?」

 仲間外れにされるのは初めてじゃない。あたし、昔からずば抜けて可愛いかったから妬まれていたし。


 なのに、なんでこんな寂しいんだろう。

 由真の時も、仕方ないって割り切っていた人間関係。辛くなかったわけじゃないけど、どうすることも出来ずに諦めたのにーー


 「早瀬は他の男子みたいに、あたしが可愛いから助けてくれたの?」

 違うって言って欲しい。なんてーーワガママ?



 「結衣、それは違う。朔は、」

 話を聞いていた麻紘が、真剣な顔であたしを見る。


 「いいよ、麻紘。俺が言う。」

 早瀬はため息を吐いて、麻紘にそう告げる。


 「結衣、ちょっと来い。 」

 そう言って、グイッとあたしの腕を引っ張る早瀬。なにを考えているのか、分かんない。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 ーーーーーーーーーーーーーーーーー


 「結衣、聞いて。」


 「やだ。聞かない。早瀬、最低だよ。」

 屋上前の階段。早瀬になぜか抱き締められているあたし。


 「まだ、なんにも伝えてないんだけど。」

 困ったように笑う早瀬。怒ったり優しくなったり分かんないよ。


 「だって、早瀬…は、」

 そこらへんに居る男子と同じだったんでしょ?



 「…また泣くの?本当、泣き虫。」

 あたしの目からボロボロ零れる涙。早瀬が泣かせてるんじゃん!ばか!


 「鈍感な結衣のために言ってやるよ。」

 優しくあたしの涙を拭う、早瀬。


 「親友なんて域じゃないくらい、俺の中で結衣が特別な存在になってんの。気付いてた?」

 「顔とか性格じゃなくて、素の結衣が好きなんだけど。」


 まっすぐ、まっすぐ、あたしを見て、早瀬はそう言った。


< 87 / 282 >

この作品をシェア

pagetop