あたし、猫かぶってます。


 「え…、?」

 聞こえなかったわけじゃないけど、あまりに衝撃的で、思わず聞き返してしまう。


 「だから、好きって言ってんじゃん。好きだから、結衣が特別だから、俺は結衣に構ってんだよ。」

 これがヤケクソ、と言うのだろうか。

 あたしを睨んで顔を赤くする早瀬は、やっぱりいつもみたいなクールさとか、王様感が無くて、早瀬らしくなかった。


 「ーーあ、そういうことね。」

 不覚にも、一瞬ドキッとしてしまっただなんて。きっと、誰にも言えない。


 「なんだ、告白されたかと思った。」

 口に出してみると、なんとも図々しい勘違い。笑えてくる。


 「早瀬が、棗ちゃん裏切る訳ないのにね。」

 あたしは漫画に出てくる主人公みたいに純粋じゃないし、鈍感でも無い。


 だから、一瞬。早瀬があたしに告白しているのかなって思った。しかも、ドキドキもした。

 けど、違う。早瀬はあたしを親友として特別って伝えたかったんだ。あたし、バカ。

 「早瀬が実は優しいの、知ってるけど。好きな人以外を特別扱いしちゃダメなんだよ。ーーあたしも奏多が他の子を特別扱いしてたら悲しいし。」


 「……結衣が考えていることは、分かった。もう、好きな奴以外を特別なんて言わねぇよ。」

 早瀬は、ハァとため息を吐いて、携帯を取り出し、カチカチと弄ってーー画面をあたしに見せる。


 「なぁ、今ここで棗に別れようって言ったら、俺の気持ち信じてくれる?」


 「っ、!」

 まっすぐな、早瀬。本気だ。


 「結衣が信じるまで何回だって言ってやるよ。ーーー俺は、結衣が好きだ。」

 逸らさなきゃいけないのに、早瀬から目を逸らせない。ねえ、冗談…じゃないの?


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