あたし、猫かぶってます。
「無理!!!」
早瀬があたしのこと好き、とか。なんか無理。やっぱりこんなの早瀬らしくないよ。
「あたし、奏多とキスしたことあるんだよ?」
幼稚園の時だけど。
「…だから何?」
焦るあたしに対してクールな早瀬。
「しかも、奏多と両想いなんだよ!?」
「知らね。」
何を言っても聞いてくれない。困るよ、早瀬。
「早瀬が入り込む隙間なんて1ミリも無いし、それにーー」
「あのさぁ。」
半分パニックになりながらも、どうにかして早瀬に諦めてもらおうと必死なあたし。そんなあたしを見て、呆れたように笑う、早瀬。
「お前が決めんな。やらなきゃ分かんねえよ。」
真剣に、あたしを見る。この空気、苦手だ。
「あと、さっき奏多とキスしたとか騒いでいたけどーー」
早瀬はそう言いながら、あたしに近付きーーー後頭部に手を添え、自分の方へ引き寄せる。
ーーーーチュ、
「っ、!?」
「これが、結衣のファーストキスだ。」
何をされたかは、分かる。ていうか、嫌でも理解させられたっていうか。これは、無い。
「最低!!!もう、奏多と付き合う!!」
変な対抗心に駆られたあたし。奏多と付き合っちゃえば、諦めるに決まってる。
「…そうはさせねぇよ。」
そう言って、あたしを抱きしめる。
ああ、もう。どうしよう。知奈ちゃんにも、奏多にも、合わせる顔無いんですけど。
「あたし、奏多と付き合うんだから!!」
もう、なんなの。早瀬!!!