あたし、猫かぶってます。


 被害者ぶっているわけでは無い。実際、本当にブリッコっていうか猫かぶっているし。みんなを騙しているのだから当然だと思う。

 猫かぶっている方がみんな優しいし、可愛がってくれる。あたしがこいつの彼氏ーーっていうか元彼に告げ口すれば、きっと表向きは仲良くしてくれる。


 立ち向かったり、知らないふりするほど強くは無いけれど、ただうずくまって泣いているほど弱くも無かった。


 「なに泣いてんの?」

 そう言いながらクスクスと笑って、奏多とオソロのブレスを踏みつけるリーダー格の女子。こいつの彼氏もあたしを好きになったらしい。


 ムカつく。お前の彼氏に想われることより、ブレスの方大事なんだけど。

 そう思うけど、反抗出来ない。暴力嫌いだし、こんな人たちのために熱くなるなんて、カッコ悪すぎ。なんて考えながら、目を閉じる。


 「ねえ。」

 目を閉じた次の瞬間に聞こえた冷めた声。


 「結衣を泣かせてんの、誰。」

 なんで、資料室なんて誰も来ないのに。先に帰ったはずなのに。


 「陰でやると、守れないからやめてくれない?」


 なんで、奏多が居るの?


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