あたし、猫かぶってます。


 「告白までは許す。」

 気難しい顔をしながらそう言う奏多。さすがって言っていいのか分かんないけど、やっぱり奏多は心が広い。


 もしも、他の誰かが奏多に告白してキスしたなんて聞いたら相手がたとえ麻紘だったとしてもキレちゃうわ、あたし。

 「奏多は優しいね。」

 でも、ちょっとヤキモチ妬いて欲しかったなーなんて。


 「結衣、俺の話聞いてた?」

 あたしを見て、ちょっと怒ったようにそう言う奏多。


 「え?」

 だから、早瀬許しちゃうんでしょ?


 「告白までは許すとは言ったけど、好きな子の唇奪われて許せるほど優しくないよ?俺。」

 不機嫌な顔でそう言う奏多。スッと顔を近付ける。


 「ガード緩くないですか、結衣ちゃん?」

 相変わらず不機嫌。だけど、その不機嫌な表情が嬉しかったり。


 「奏多、怒ってる?」

 喧嘩なんてされても困るけど、あっさり許されるのも寂しい、なんて。ワガママだよね、知ってる。


 「怒ってるよ。ーーーちょっとだけ。てか、妬いた。」

 奏多の一言で、あたしの胸は一気にドキドキとする。早瀬に一瞬でもときめいちゃってごめんね、奏多。




 「ね、結衣。」

 何かを決意したかのようにあたしを見る奏多。…もしかして、やっと言ってくれる?


 「な、なに?」

 あたしまで無駄に緊張。ここで告白されたら大好きな奏多と付き合えるし早瀬を諦めさせられるし、一石二鳥じゃない?


 「つ、」

 言え!!!秋村奏多!!


 「つらいよね、今の季節。」


 「へ?」



 あ、そうか忘れてた。奏多ってチキンだった…

 って、男なら言えよ!みたいな。まあ、そんなとこも好きだけど。


 ていうか、恥ずかしいセリフたくさん言ってくるくせに、いざという時に照れるってーーどうなの、奏多くん?



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