あたし、猫かぶってます。


 あたしから言ってもいいんだけど、やっぱり奏多から言って欲しいじゃん?


 「突き当たりにウサギ居たよね!!!」

 奏多も、真っ赤な顔で誤魔化しながらも頑張ってくれてるし。なにが言いたいのかは充分伝わるし。


 「ま!いいや。」

 彼氏とか彼女じゃなくても、早瀬に諦めてもらう方法はいくらでもあるし?


 「結衣、いま早瀬くんのこと考えてたでしょ。」

 さっきまで照れながらツラいとか突き当たりとか意味不明なことを言っていた奏多は居なくて。目の前の奏多はーー意地悪に笑う、奏多。


 「俺、妬いちゃうんだけどなー?」

 拗ねる、というよりは、あたしを見て楽しんでいるような感じ。さっきまでのチキン奏多はどこに行ったんだろう。


 「え、ちょ、奏多くーん?」


 「キスだけでも傷付いたのにーー結衣は早瀬くんのこと考えていたのかぁ。」

 わざとらしい。スッゴくわざとらしい。


 「あんま余裕出してると、俺、知らないよ?」

 目の前に居るのは奏多。さっきまでチキンだった奏多くん。

 …ギャップ、すごくないですか?


< 93 / 282 >

この作品をシェア

pagetop