あたし、猫かぶってます。


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 「って訳で、今日からあたし早瀬と話さないから!」

 翌日。早瀬に昨日のことを説明して、威張りながらそう告げる。あたしにキスした罰だし!せいぜい傷付けバーカ。


 「…びっくりした。」

 早瀬は驚いたようにあたしを見て、そう呟く。


 「無視されるの覚悟だったけど、ちゃんと話してくれるんだな。」

 ちょっと笑いながら、あたしを見る。


 え?もしかして、あたし何も言わずに無視するべきだったの?ミスったの?



 「結衣、優しいじゃん。」

 …いやいや、なんかおかしいよね。


 てか、恋は惚れた方が負けなはずなのに。あたしは初めて早瀬に勝ったはずなのに。早瀬はなんでこんなに余裕があって、あたしはこんなに焦ってるんだろ。


 「でも、一応親友の俺を無視するんだ?」

 捨てられた子犬のようにあたしを見る。珍しくシュンとしている早瀬になんか、良心が痛む。


 「ーーー…。」


 「結衣なら、分かってくれると思ったんだけどな…」

 話すな、あたし。耐えるの!


 「やば、無視ってこんなツラいんだな…」


 「ーーーっ!!ごめん、早瀬!やっぱあたし達親友で…」


 「やっと話した。」

 ニヤリと笑う早瀬を見て、後悔するあたし。

 そうだ、早瀬はこんなことでしょげる人じゃない。早瀬はーー


 「そんなに俺のこと、心配だった?」

 早瀬は、こういう人だった。


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