あたし、猫かぶってます。


 王様みたいで、自己中な人の手本みたいな早瀬が優しくなると正直焦る。なんか、困る。


 「意地張ってないで、俺を好きになれよ。」

 意地張ってないし!そう言いたいのに。むちゃくちゃなこと言うくせに、スッゴく優しい表情するから、言い返せない。


 「…ならないから。」

 早瀬なんか好きになっても、なんも良いことない。棗ちゃんや、奏多を傷つけてまで早瀬を選びたくない。


 「まーた変なこと考えてるだろ?ぶっさいくな顔。」


 「は?」

 不細工って言ったよね?何こいつ。


 「ごちゃごちゃ考えてないで、結衣は俺のことだけ考えて悩めば良んだよ。」

 なんて自己中。早瀬の王様っぷりはきっと一生直らない。早瀬は自分が一番だもん。だから、絶対好きになっちゃーーダメ 。


 「大体、奏多や麻紘は呼び捨てっておかしくね?俺のことは早瀬って呼ぶクセに。」


 「おかしくないし!」

 朔とか、呼びたくない。なんか。彼女じゃないのに、朔とかおかしくない?


 「ずりー。奏多だけヒイキすんなよ。」

 口をちょっと曲げて拗ねたようにあたしを見る、早瀬。なんか、なんか、なんか!!


 心臓うっさい。静かにして。

 奏多以外の男子にドキドキするなんて、絶対おかしい。絶対絶対おかしいから、早く治まって。


 「朔!!!これで、満足!?」

 ーーー耐えきれなくなって、ダッシュで教室を出る。ごめん奏多、先帰るわ。


 イジワルな奏多、分かんない。
 優しくなる早瀬、分かんない。
 はっきりしないあたし、一番分かんない。謎。


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