あたし、猫かぶってます。


 ーーー進路室。


 「早瀬は進学か就職か決めてるか?」


 「一応、進学希望です。」

 案外普通に進んでいく面談。なんで矢口先生なのかは謎。奏多もう帰ったのかなぁ。


 ーー「早瀬は、好きな人居るか?」

 ふと、矢口に手を軽く握られてそう聞かれる。え、なに?触んないでよ。


 「なんでそんなこと聞くんですか?」

 あくまで笑顔。でもなんとなく嫌な予感がしてならない。


 「結衣は賢いから分かるだろ?」

 そう言って、あたしの首筋に優しく触れる。


 「っ、」

 気持ち悪いとか、鳥肌立つとか、まぁ色々あるんだけどーー純粋に怖かった。


 「今後のためにも、言うこと聞いた方が良いんじゃないの?」

 矢口の言っている意味は、すぐに理解できた。ーーーだからあたしは、思い切り立ち上がった。


 逃げなきゃ。

 もうほとんどの生徒は下校している。早く逃げなきゃ。 


 「追いかけっこ、しようか。」

 ニヤリと笑う矢口。半泣きで体育館倉庫へ走るあたし。


 ーーーなにこれ、あたし超ピンチじゃん。


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