ここに在らず。


その言葉に私は、そうか、確かにそうだと納得する。気にならなきゃ声なんてかけない。だから声をかけるって事は気になっているという事。…うん。でも…一体、私の何にだろう。


「…サエ」


やっぱり本?何読んでるか聞いてくるのは本が知りたいから?あ、そっか。だからいつもいるよなって言ったのかな。本に詳しいよなって事?そうか、本の事が本当は聞きたいんだ。だとしたら…、


「サエ」

「あ、はい。なんでしょう?」

「……」

「あれ?トウマさん?」

「……」


…なんだか、物凄く複雑な表情をするトウマさん。

そんな彼を見て、それでも私には…その表情の裏にあるであろう彼の気持ちがさっぱり分からない。

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